ニチレイのサイバー攻撃事案から学ぶ

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門井 陽亮

B!

従来の情報セキュリティ対策だけでなく、ITーBCP(IT事業継続計画)が不可欠

 

サイバー攻撃とサプライチェーンのリスク

 2026年7月、食品大手ニチレイはサイバー攻撃を受け、冷蔵倉庫の入出庫業務や冷凍食品の出荷業務に大きな影響が発生した。 
この事案は単なる情報システム障害ではなく、日本の食品物流網全体に波及したサプライチェーンリスクの事例として注目されている。
 ニチレイロジグループは国内最大級の低温物流ネットワークを運営しており、年間約5,000社がサービスを利用している。そのためシステム停止の影響は同社だけに留まらなかった。
 実際に、飲食チェーンでは一部店舗で営業時間短縮や販売制限が発生、小売業では商品供給の遅延や欠品が発生した。さらに、一部学校給食への影響も報じられており、一企業へのサイバー攻撃が、社会インフラである物流機能の停止につながり、社会や消費者生活にまで影響を及ぼすことを示した。
 この事案において注目すべき点は、情報漏えいや金銭被害ではなく、「物流機能そのものの停止」が主な影響となったことである。物流は社会インフラとしての役割を担っており、その停止は幅広い業界へ波及する。
 また、被害拡大を防ぐためにニチレイ自身がシステム遮断を選択した結果、業務停止が発生したことも特徴的である。情報資産を守るための措置が事業停止につながるという、デジタル化が進む企業特有の課題を浮き彫りにした。

迅速な初動対応と計画されたレジリエンス

一方で、ニチレイは7月13日の障害検知後、速やかに緊急対策本部を設置し、システム隔離や外部専門機関との連携を実施した。安全性を確認した業務から段階的に再開する方針を採り、7月17日には主要な物流業務を再開している。大規模サイバーインシデントとしては比較的短期間での復旧であり、組織のレジリエンス(回復力)の高さを示した事例とも言える。
 今回の事例から得られる最大の教訓は、「サイバー攻撃は情報漏えいだけでなく事業停止を引き起こす」ということである。そのため企業には、システム停止時の代替手順、手作業による業務継続方法、重要システムの優先復旧順位、バックアップ・復元体制、委託先停止時の代替策などを定めたITーBCP(IT事業継続計画)が不可欠となる。特に、自社だけでなく取引先や委託先を含めたサプライチェーン全体を視野に入れた対策と訓練が重要である。 ニチレイの事例から学ぶことは、企業はセキュリティ事故防衛対策に加え、事故発生時における迅速な封じ込め、代替運用、段階的復旧を実現するITーBCPを整備することで、サイバー攻撃に強い組織づくりを進めていく必要がある、ということである。

ニチレイ事案のポイント
攻撃を受けたのはニチレイ1社
影響は外食、小売、食品メーカー、宅配、生協、学校給食へ波及
「情報漏えい」よりも「物流停止」が社会的影響を拡大
委託先停止により自社も事業停止に追い込まれることが明確化



出展:ニチレイの報道発表資料より引用
(https://www.nichirei.co.jp/news/2026)

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